デザインアイデアは、質か?量か?

Webデザインのアイデアを出す際、質を求めるか?量を求めるか?という話についてです。自分の考えでは、直観的に質のほうが大事と考えていました。しかし、質の高いデザインを捻り出すためには論理的に量だと考えられているようです。質を求めて、ひとつデザインアイデアのイメージが湧いたときに、それを時間をかけて丁寧に掘り下げるアプローチは、なぜ良くないのかについて少し考えてみたいと思います。 
 
1.質は、量からしか生まれない 

この考えは意外ですが、そういった考えが主流のようです。最初から「完璧なひとつの案」を目指すのは、非効率で自己陶酔に陥りやすい。Googleや著名なデザインコンサルティングファームのIDEOのデザインのプロセスでは、「数を撃てば、当たる」ではなく「数を撃って、フィードバックを受けて洗練させる」といったアプローチがが正解と考えられているようです。 

 
2.フィードバックは、アウトプットの“数”に比例する 

ひとつしかアイデアを出さなかった場合、それに対するフィードバックしか受け取れないためフィードバックが限定的になってしまいます。複数の案があることによって「比較」や「方向性」のフィードバックも受けることが可能になります。複数の案があり異なる視点からのフィードバックが得られると、結果的により深い気づきを得られるため結果的にアウトプットを洗練させやすくなるのだそうです。確かにこの案のココはいいけど、もうひとつの案のこの視点はウィットに富んでいる。いいところをミックスしてこうしてみたらどうだろう?という会話はよくあります。 
 

3.ひとつの案に時間をかけ過ぎるとクローズドループに陥りやすい。 

第三者からのフィードバックを素直に受け入れるのが困難な状況に陥ってしまうことをクローズドループ呼びますが、ひとつの案に時間をかけるとその分、「否定されたくない」という心理が働きフィードバックに受け入れにくくしてしまいます。ユーザが操作に失敗している現実を目の当たりにしても、この事実を受け入れられないといった状況まで作り出してしまうこともあります。ユーザビリティテストにおいてもターゲットではないから・・・という見苦しい言い訳が飛び出すあれです。 

ちなみに、IDEOのデザインのプロセスでは、デザインの目的を明確にした上で、アイデアを大量に出す、続いてそれらのアイデアを早く・安く・粗く形にして、すぐにフィードバックを得るというプロセスを踏み、それからプロトタイプを作ってユーザにテストしてもらうという流れで進めていくのだそうです。 

現実的には、そこまで時間や予算を確保できないという声が聞こえてきそうですが、ひとつのアイデアを元に、たったひとつの最適解をいきなり作り出そうという思想は、非効率で危険でもあると考えられているのだそうですが、確かにその通りだと納得せざるを得ない気もしまし、このことは覚えておくべきかと思います。 

デザインのプロセスと問題解決のプロセス 
IDEOでのデザインのアプローチ は、大まかには以下のように定められています。

・目的を理解(共感)する。 
・デザインアイデアをたくさん洗い出す。 
・デザインアイデアを素早くたくさん形にする。 
・デザインアイデアのフィードバックをもらう。 
・プロトタイプを作ってテストする。 
 
この一連の流れを眺めると、コンサルタントの問題解決のプロセスやリーンスタートアップなどで採用されている開発プロセスととてもよく似ていることに気づきます。問題解決のために、解決策を決め打ちするのではなくまずは打ち手を洗い出すというアプローチを取る点です。デザイナーにデザインとは何か?という深い質問をすると問題解決です!と答えるデザイナーがいますが、問題解決とデザインのプロセスがとてもよく似ているのは面白いところだと思います。 
 
以上、ご参考まで。