スキナーの実験とUI/UX

バラス スキナーは、20世紀の行動分析学の創始者として知られるアメリカの心理学者です。彼の基本的な考えとして、自由意志は幻想で、人間の行動は過去の行動結果に依存すると考えていたそうです。なかでも自発的な行動を起こす条件に関するネズミを使った実験が有名です。 

このネズミの実験とは、どのような実験かというと箱の中にあるレバーを引くとエサが出て来る仕掛けを使った実験です。そこにネズミを入れ、レバーを押すとエサがでてくることを学ぶと自発的にレバーを押すようになるという、そりゃそうだろ!とでも言いたくもなるようなほとんど当たり前のような話です。レバーを押すという行動とエサを得るという報酬がリンクすることにより、レバーを自発的に押すようになるということです。 

これのどこがUI/UXのデザインに役立つのかと思われるかもしれませんが、応用が可能です。例えば、ある画面のインターフェースを見たときに、このボタンを押すと〇〇が起こるはずだと無意識のうちに行動に対する結果を予想してしまいますが、この時、予想した通りの結果が得られたときには、それが成功体験となり、脳内にドーパミン、すなわち脳に対する報酬が得られます。逆に、予想と違う結果を返されてしまうと、脳に不快を与えてしまうことにもなることは、経験上、腑に落ちるのではないかと思います。 

そう考えると、ユーザビリティテストでのお約束の質問である、〇〇〇は何だと思いますか?□□□を押すと何が起こると思いますか?という質問は、正しく予想し成功体験を積ませることが可能で、UXを損なうことがないインターフェースに仕上がっているかをテストしているとも言えそうです。 

少し古いゲームになりますが、任天堂のスーパーマリオブラザーズというゲームがあります。あのゲームをはじめてやったときに左に向かってマリオを操作する人はまずいませんし、クリボーを味方だと思う人もほとんどいないでしょう。ユーザは、これは右に行くのかなと予想して、右にスクロールしていくと新しい世界が展開されていき、予想通りクリボーは敵であり、踏んで倒したら得点を得られるというのも見方を変えれば、自分の予想と結果が一致したという成功体験が提供されるようにしてデザインされているのだそうです。 

 
【スキナーの実験のおまけ】 

もうひとつスキナーのネズミの実験で面白い実験結果があります。レバーを押すと必ずエサがでてくる場合とランダムでエサがでてくる場合、どちらのほうがネズミにレバーをたくさん押させたか?という実験です。必ずもらえるほうがレバーを押しそうにも思えますが、実験の結果は、そうではなく不確実性があってランダムにエサが与えられたたほうが繰り返しレバーを押すという結果になったそうです。 

つまり、結果として得られる報酬に不確実性を持たせることによって、より多くの行動を起こしてしまうということになります。分かり易くその体験が応用されている例としては、パチンコなどが思い当たりますが、以前、問題にもなったガチャなども同じような仕掛けと言えそうです。またSNSやユーザ参加型メディアでの「いいね」やレスなどについても、確実に多くの「いいね」をされたり、好意的なレスを得られるわけではないので、承認欲求が満たされるか否かは不確実です。この不確実性のある報酬がSNSやユーザ参加型のサービスを繰り返し使ってしまう原動力になっているのかもしれませんね。 
 

以上、ご参考まで。